金沢まち・ひと会議

| 水曜日 30 3月 2016

きょうの現代美術 第三回

「今日の現代美術3」という名前をつけました。前の二回もカウントして3回目の投稿。もう勝手にシリーズ化しよう! デマリアの球体好きの別バージョンです。こちらは球体が動くというだけでなく、それが支持する形態が意味を持ちます。例えば丸三角四角があり、また十数面体というものもあります。それに単なる幾何形態ではなく限りなく象徴的な意味を帯びた形もあります。例えばクロス十字架。これは明らかにキリスト教との関連を示すものですし、それに卍ハーケンクロイツなども使用しています。今ではナチスドイツの忌まわしい歴史を象徴する記号になってしまいましたが、これらは歴史的にも古く、世界各地に存在する重要な記号です。球体は固定されていないから、形や記号をトレースするように動くだろうと想像させます。実際に観客によって動かすことはできないから想像になりますが、それを裏付けるように球体が動いた跡が見て取れる。初期の木製箱型作品では垂直にストンと落ちる姿によって、重力を表していた球体ですが、今ではある記号や形をトレースしながら動いていき、その背後の意味や歴史を掘り起こしていく、解釈やイメージを形成する力を表しているものに見えます。さてもう1つ、デマリアが単に幾何学を用いているわけではないということがよくわかる参照作品を紹介します。日本の禅僧である仙厓の丸三角四角の作品です。これを見ると「ああ、なんだ!デマリアはこれを参照したのか」と納得できます。デマリアは単なる抽象彫刻家ではありません。非常にコンセプチュアルに作品を制作し、何重にも意味を重ねています。ですから仙厓の作品もただの形態的なアイデアと参考にしたのではなくて、はっきりと思想的な背景を理解して引用しています。そこが面白いところですね。抽象幾何形態だけでなく、象徴的な意味をふんだんに持つものを用いることで、おおっ!重力が歴史や宗教的な概念や人間が作り出す想念にも関わってくるのかと空想させる魅力があります。つまり力が世界を動かしているのか、ということです。ここまでくるとデマリアの想像力が飛び跳ねている感じですね!