老朽化が進んでいた中の橋が‘お色直し’(4月中旬から通行止め。橋の上に作業小屋を作っての作業。工事というより地道で高い技能を要する木工仕事)をして20年ぶりに蘇った。
真新しい木の香りを放ち、色もかなり明るくなって(これから何年もかけて徐々に渋い色になっていくんだろう)通るだけでちょっとワクワクする。
昼間の暑さの代わりに夜の散歩がますます快適になる季節、夜風の香りを楽しみながら歩いていると大分傾いた三日月に気が付いた。
橋の上から沈みゆく月を眺めようと階段に歩いていく途中、その手摺と高欄が作る構図の中に月が丁度良くハマる瞬間があった。奥行きのある真新しい木箱に三日月が収まった様な・・・そんなカンジ。これも金澤らしい月の光景。2013年06月14日 22時09分撮影
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中の橋 箱入り三日月
兼六園 時代重ね
兼六園は長い年月をかけて、歴代の藩主の様々な思惑によって時々の作庭が施されてきた。(明治時代、時の市長邸宅の庭として整えられた箇所もある)なので広い園内各所に見所が豊富に点在し、回遊には誠に事欠かない。
同時に「何世代にも渡る意図が偶然垣間見せる」ちょっとした光景もアチラコチラに出現する。
5月も下旬を迎え曲水の杜若もまさに見頃、其処此処に「ここからご覧になるのがいいですよ」とばかりに整えられた眺めが出現している最中、ふと歴史の重層が作る「誰も意図していない」光景に魅入った。
湿度の高いこの季節独特の光の拡散による奥行き(霧が風景に奥行きを加える効果の極々初期の段階にも似た・・と言えば分かって頂けるだろうか)が風景を深く豊かに見せている。
それぞれの時代の庭を横から貫いた景色。兼六園のもう一つの顔。
観光客がほとんど退園した閉園近く。自分が今日発見した構図と一対一で対峙する幸せなひと時。
2013年05月22日 17時45分撮影
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広坂緑地 水無月夕景
湿度の高い日が続く6月は、淡い春の空とは打って変わって、鮮やかで滲んだ深い色彩の夕暮をしばしば迎える。
旧県庁の一部を活かしつつ巧みに見事に環境を整えた「しいのき迎賓館」その周りの広坂緑地は夕暮を眺めるにも最適な場所。
夜の会合に向う途中、ちょっとその片鱗を眺めようと思って寄り道してみたけどこの日は時間切れ。
日没が19時を余裕で超えるこの時期、夕焼けはまだまだ先の出来事。
とは言えモチロン・・・
綺麗なカーブを描く‘曲水’モチーフの水路(左右の縁の造りが違う、かまぼこ状の縁石の孤が僅かに左右非対称なコトにも注目。細部にまで拘って造形されている)と芝生と迎賓館と空がバランスして出現させる光景はその時々のさりげない美しさ。これはこれで素敵な夕暮の眺め。
2013年06月12日 18時22分撮影
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薄花桜 石川橋桜夕景
金澤は雨が多い。桜の季節も例外ではなく、開花から散るまでの間、何度も桜は濡れる。
(意外な事実を補足しておくと年間日照時間は東京のほぼ9割。春から秋までは金沢の方が日照が多い)
足元が悪かったり傘を差す必要はあるけれど、風景全体に艶を与え、大気を香らせて「季節を味わう」観点ではプラスなコトが多い。
この時期多くの観光客がシャッターを切るここ石川橋の上からの眺めも雨に濡れて一段と魅力を増している。雨の上がった曇天の夕暮は一般的な観光には不向きだろうけど。
夕闇の帳が降り始め、道路が照らされ始め、満開の桜が濡れて若干透き通りながら淡く浮かび・・・雨が作り上げた金澤らしい桜の夕景。薄花桜色に染まる夕暮。
日本の伝統色「薄花桜」には「薄い桜色」の意味も「薄い藍色」の意味もあるそう。昔の人達もきっとこういう時間の色合いを愛でたのだろうな。
2013:04:06 18:24撮影
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桜蒔絵 兼六園下
兼六園下バス停は沢山の路線バスの他、周遊バス、兼六園シャトルバス、県外への長距離など様々なバスが停まるターミナル。※観光の方はこの石段を昇って兼六園へ行くのがお決まりのコース。
雨、強風、低温など天候が乱れがちだった2013年は、穏やかな満開や桜吹雪はあまり見られなかったものの・・それでもやはり多彩多様な桜風姿が出現し、楽しませてくれた。
ちょっと前に上がった雨が「にかわ」になり花弁があちこちに張り付かせ、また「釉薬」となって風景に艶を与え、微かに蒼味を帯びた夕暮の空と相まって絶妙な光景。桜蒔絵が出現していた。
「この年、この日、この時」だけの味わい深い桜の光景。
特別な庭園の奥深く、とかではなく旧市街の日常、それも多くの人が目にする・・・というのが金澤らしい。
僕は常々「旧市街は兼六園の外に広がるもう一つの兼六園」だと思っているけど、その分かりやすい一例。
2013:04:11 17:56撮影
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早咲き枝垂れ桜 慶恩寺
複雑な地形と、その種類が豊富な金澤では桜の楽しめる期間が長い。
ここ石引、慶恩寺の桜は気象台が「開花」を発表する頃にはとっくに満開。(2013年金沢の「開花宣言」は3月30日)路地の奥にひっそり位置するコトもあり「お花見はもうちょっと先かなぁ・・」なんて思いながら歩いていると嬉しい不意打ちにあう。
兼六園や犀川、浅野川、卯辰山、金沢城石川橋からの桜霞・・・金沢には沢山の桜の見所、眺め方があるけど、これはこれでまた味わい深い。
あちらは大ホールで聴く交響曲、こちらは小さなライブハウスで耳を傾ける熟練の演奏、そんな趣かな。
桜には目もくれずボールを蹴る子供の上で微かな風にパラパラと花弁をちらす夕暮。 2013年04月01日 17時45分撮影
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花待ち柳
全国的にかなり暖かい2013年3月の下旬、今にも咲きそうなほど膨む桜(例年なら4月の第1週あたり)の蕾の様子を伺いに浅野川に出てみたら、淡い淡いおぼろが満ちる空に浮かぶ満月の‘不意打ち’にあった。思わず「おぉ!」と声が漏れそうなくらいの光景。
浅野川大橋袂の大きな柳、柔らかい風にゆらりふわりと揺れる繊細で鮮烈な若葉を纏い始めた枝越しの月は、春の始めの宵らしい妖艶な美しさ。
歳を重ねてますます艶っぽい、風格ある老芸妓さんをお相手にしみじみお月見をしている様な。
2013年03月26日 18時58分撮影
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月下氷柱 尾山神社
殆ど氷点下にならない金澤も春の始まりが近いこの頃になるとようやく、零度を下回る夜が時々訪れる。(最近30年の統計で平均最低気温が最も低いのは2月、勿論マイナスではない。ちなみに12〜2月の最低気温は名古屋とほぼ同じで、12月と1月は金澤の方が若干高い)
宴の帰り道、立ち寄った尾山神社の鎖樋が凍って見事な氷柱が出来ていた。折良く一四夜の月も雲間から顔を出し、ちょっとゾクゾクする位美しい光景。
この日しばしば降った雪にすっかり洗われ、澄んだ濃い蒼色の夜空。真っ白い、ホントに真っ白い雲がゆっくり千切れ流れていく中に浮かぶ月、風も無く雪の溶け落ちる音も無い静かな夜に鈍く輝く氷柱。2月の金澤らしい幻想的な月の風景。
2013年02月24日23時31分撮影
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