金沢まち・ひと会議

| 水曜日 30 3月 2016

きょうの現代美術 第二回

前回、現代美術家のウォルターデマリアの作品を紹介したら、いいリアクションだったので、調子に乗って作品紹介。デマリアの球体への興味の話の続きです。前回、直島の作品から急に球体が出てきたと思ったが、実はそうではなく、三角四角などの他の直線的な多角形と同様によく使う形だったという話。デマリアの重要なモチーフでした。今日はその証拠となる初期の作品を紹介します。身長ほどある木製の箱に縦にちょうど手が入るほどの穴が二つ空いています。備え付けの球があり、穴に入れることができるようになってます。上から球を入れるとそのままなんの抵抗もなく、下までゴン!と落ちます。まさに間髪入れず「ゴン!」です。すごい音がして「はっ!?」として、気まずい感じになります。木製の箱に対して、球体も硬い素材ので、それで結構な衝撃なります。この作品は、この気まずい行為、つまり、「ゴン!」と石の球を落とす行為が鑑賞体験になります。さてこれによってデマリアは何を伝えようとしたのでしょうか? 「ゴン!」という強い衝撃を感じて気まずい気分になるというところの前半部分だけが大事なので、そこを考えてみましょう。後半の「気まずい気分」は、私が勝手に感じているだけで重要でもなんでもありません。あくまでポイントは前半の「ゴン!」という衝撃音から想像できることです。重い物が落ちてきたなあ、あるいは私が驚いたように想像以上に「重い」物が落ちてきたという印象を与えたいのでしょう。本人は語っていないのですが、想像するに、たぶん、「重さ」の表現をしたかったのではないかと思います。当たり前ですが、物はどんなものでも重さがあります。重さはどんなものでも例外なく存在します。そしてそれは、どこまでも広げることができる、モノを司る法則でもあります。つまりものである以上失うことのない「重力」が存在するのです。木製の箱に不釣り合いな重い球。四角く空いた窓から石を入れれば、瞬時に下の窓まで落ちます。その速度は「こんなに早いのか!」と思うほどの瞬間です。「ゴン‼︎」です。デマリアといえば、何か動かない普遍的なコンセプトのイメージがありますが、むしろこのように動きの中に見るべきものがあるのかもしれません。例えば、代表作のライトニングフィールドも同様です。突然、雷が参入し、落ちる。音への興味は、彼のキャリアの始まりが音楽家だったということからもわかります。この作品は、デマリアが気に入っていたようで、スタジオにずっと置いていました。私もスタジオで「ゴン」をやってます。たぶん作品制作年は1960年代のものです。かなり早い時期のコンセプチュアルアートですね。モノリス型の箱中央あたりに四角の中に丸い玉が見えるのがわかりますか?あれを持って上の穴から落とします。「ゴン!」さてこの球は、40年後には2メートルを超える不動の球体として直島に登場します。